“お節介なオバサン”化現象
長女の通う絵画教室主催の写生会に参加するため、画材とお茶をぶら下げて、運河の端へ。
行きがけの電車の中で、目の前の子どもが靴を履いたままシートに膝立ちになり、窓の外を眺め始めた。5歳くらいか。んー、いや、もうちょっと幼いかもしれない。昨日営業運転を開始したばかりの真新しい電車は見物気分の乗客で満員で、車両が揺れるたびに、その子どもの靴底が前に立つ婦人のズボンを汚した。
「ボク、人に当たるから靴脱ごうか。」
しばらく迷った末ではあったけれど、ついに見かねて口を出してしまった。ところが、そのガキ坊やは、ジロッとわたしを一瞥しただけで、体の向きひとつ改めようとはしなかった。ムカッ!あら、あら。
「ねえ、ボク。」
──無視。
現在進行形でズボンを汚されている婦人は「いいんですよ。」と言ったけれど、いったん口を出してしまった以上、引っ込みはつかない。今や彼女ではなく、わたし自身の問題だ。 ぽん、ぽん、ぽん、とその子どもの背を叩いた。そして、さっきより少しだけ大きな声で
「ボク。お外見るなら、靴脱ごう。人の服に当たってるよ。」
そこではじめて、隣の席に座っていた父親らしい男性が気づいた。それまで彼もまた、子どもに背を向ける格好で体をねじり、窓外を眺めていたのだ。
「あ、すいません。」 バシッ、バシッ!!!???
父親は“ボク”の靴を脱がそうとしてうまくいかず、その足をひっぱたいた。
ごめん、こんな身動きの取れない、逃げ場のないところであなたに恥をかかせてしまって。だからって、子どもに当たらないでやってちょうだい。
写生会が始まって、わたしと長女の近くいた、幼稚園の年長くらいの女の子が、突然長女の顔を覗き込み、兄らしき子どもに
「鼻がつぶれてて、変な顔。すごい変。」
と言いながら、長女を指差した。とっさに、そのクソガキ少女の目線の高さまで腰を屈めて
「そんなこと言われたら悲しいから言わんで。」
と話していたわたし。(アンタの顔の方がよっぽど変じゃ、と言わなかっただけマシか)
写生を終えてわたしたちが駅に向かって歩き出した時、運河の端から身を乗り出し、脇に落ちていたオールで水中を突つき回していた小学生の少年2人。一瞬、バランスを崩してよろけるのを見た。
「落ちないように気をつけなさいよ!」
どうしても黙っていられなくて、通りがかりに声を投げた。見知らぬオバサンに注意されて、2人は不思議そうにこちらを見ていた。
イヤになった。
昔は、他人のことなんか放っておけたような気がする。他人の事になんか無関心でいられた。どうでもよかった。それは、とても楽だった。見も知らぬ誰かのために心がざわめいたり、イライラしたり、そんな無駄なエネルギーを使わなくてよかったのだもの。
自分の家族のことをとやかく言われても、どうせ2度と会うことのない相手だと思えば黙っていられた…はず。
それが、いつのころからこんなにお節介になってしまったのか。これじゃあ、イヤなオバサンだ。わたしだって若いころなら
「うっさいな、ほっといてよ!」
と感じたに違いない、お節介オバサン。 どうしよ…。確実に進むオバサン化現象に歯止めが効かない~~~!!
※photoのページに写真を追加しました。ほんの数枚ね。
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